Journal

May. 8, 2020(Fri)

第四話『ウイルスおっかない』

こんな状況ですから、きっと多くの人がそうであるように、私も気持ちがぐーんと落ち込んでいったわけです。

ライブハウスを失った私たちミュージシャンは、まさに水を得た魚、の逆であり、ぴちぴちと音を立てながら、ただ死ぬのを待つ。しかない。動けず。

布団でぴちぴちしながら、Twitter等を観ます。

すると世の中には、こんな厳しい状況の中で勇しく戦っている戦士たちがいることに気付きますわ!

声を出し!アクションを起こし!声を出す!なんとかこの状況を打破しようと!声を!

凄い。私、私には無理だ。全然無理。

10年前にバイト先の後輩から借りパクしたゲームボーイポケットを引っ張り出し、ゲームとかをしてみる。時間を忘れ、のめり込む。そして目を痛め、肩を凝る。

そして目、肩からの頭痛痛み、気持ち、さらに落ち込み、あまり寝れず。

作曲?

無理無理無理!

配信?

無理無理無理!

全然そんな気持ちになれない。

ここまで落ち込んだのは、あの時以来だ。




さて。

「すべては完璧なタイミングでやってくる」

この言葉を毎度まじないのように唱え、迫りくる困難を幾度となく無理矢理乗り越えてきたおれには、不思議で仕方なかった。

信じていたモノが消滅し、価値観がリセットされ、目的を失い、積み重ねてきた自信が、さらさらと次々吹き飛ばされていった。

何故、こんな体験さすん!おれに!
なんで落ち込ますん、こんなに!


こうして深く深く落ち込み、降っていった地点に、驚くべき出会いがありました。



小川洋子『完璧な病室』



あれか、この小説を。おれに、読ますためにか。

まじか。

生まれて初めて、誰にも教えたくない作品に出会いました。

絶対に読まないで下さい。

この小説は、おれのものです。