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Jun. 8, 2017(Thu)

第三話『初恋について。』

二十歳くらいの時、僕がまだ夢というものをポケットに突っ込んで持ち歩いていた頃。進むべき方向が分からなくなって、友達のU水君に相談したことがあった。
彼はもちろん男だけど、僕にとっては初恋の相手のようなの人で、憧れだった。
彼は僕に二つのアドバイスをくれた。
一つは、毎日日記をつけること。もう一つは、「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を読むこと。
日記の方は、あれから今もずっと習慣になっているけど、
本の方は活字を読む習慣がなかった当時、上巻の半分で挫折してしまった。

あれから長い年月が経って、今やっとU水君のアドバイスのもう一方を受け取ることができた。読了。

この話は、とにかく深い。果てしなく深い。そして、ものすごく優しい。
この小説を読んだことのある人は分かるかもしれないけど、この話を誰かに薦めるということは、その相手を相当信頼していて、大事に思ってる。もうほとんど「好き」と言っているに近い。
一方的な片想いだと思っていたけど、案外両想いだったのかもな、と嬉しくなった(ゲイではないですけど笑)。

僕にもこの小説のような、底なしに深く、そして優しい作品を作れる日というのは来るのだろうか。
ポケットに入っていた夢はどこかで落としてきたけど、代わりに拾ったものもある。もう少しハッキリした手応えあるもの。目標のような、地図のような、運命のような、そんなもの。
人生は第何章まであるかわからないけど、ここのところまた新しい章が始まった。
主観と客観を行き来しながら、物語のように、
読む。